フィネガンズ・ウェイク5pその3

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what the agentlike brought about that tragoady thundersday this municipal sin business?
→宮田「それでは、あの山羊悲劇の雷木曜日、この都市罪をもたらしたのはまことに何だったのか。」
柳瀬「するといかなる動奇にかられて、あの淫果な雷曜日に、この町がったむ罪事をやらかしたのか?」
agentは代理人。tragoadyというのは、tragedy悲劇とgoat山羊。thundersdayも、thunder雷とthursday木曜日。municipalは「都市の」。goat山羊は淫乱さの象徴でもあるから、柳瀬では「淫果」である。

our cubehouse still rocks as earwitness to the thunder of his arafatas but we here also through successive ages that shebby choruysh of unkalified
muzzlenimiissilehims that would blackguardise the whitestone ever hurtleturtled out of heaven.
→宮田「われらがさいころハウスは父なるアラファタ山の雷の耳証人のごとくいまだに揺れているが、われらはどの時代にも、天から放り出された白石に黒い悪態をつく、死に神カーリに取り憑かれた無資格ムスリムミシレヒムイスラム族のあのか細いコーラスの声を聞く。」
柳瀬「われらが方家はいまだ揺れつつ彼の荒裸(アララ)トしい雷音を証耳(しょうじ)きに聞き、しかし世に世を継いでに不死ずまらぬかいきょうどものもつれへむのめっためっかな雑唱は、天から転落した白玉を黒くるめにしようとしている。」
rockは「揺れる」。witnessは証人。arafatという山はメッカにあるムスリムの巡礼地。アララト山とは別物。柳瀬では方舟が出てくるからアララト山にしたのか?少なくともアラファト山とアララト山が直接関係しているという情報は確認されなかった。araとかいうとラテン語で祭壇。ara+fat(ファーザー)で、アブラハムの、息子イサクを神への捧げ物にしようとしたという話に関わるとの見方もある。thunderとあるが、コーランの13章は「雷電」という題名である。
shabbyは「みすぼらしい」。shebならアラビア語で岩らしい。choruyshはもちろんコーラスの意味があるが、イスラム教創成期のクライシュ族のことでもあるとか。unkalifiedは、unqualified「無資格」。またカリフの意味もあるし、ヒンドゥー教の死神のカーリーでもある(宮田訳ではその解釈だ)(柳瀬では死神にアンが付いているので「不死ずまらぬ」か)。muzzlenimiissilehimsは、まずやはり「ムスリム」があるし、muzzleなら「銃口」、enemy「敵」もあるか。またミサイルという単語が見えるが、メッカでムスリムが悪魔払いのために投げる石のことか。またこの単語全体で、「モスリンを着たムスリム」という解釈も出来る。柳瀬の「もつれへむ」とかはベツレヘム(パレスチナのイエス生誕の地)も思わせる。でも、はっきり言って両者とも十全に訳しているとは思えない。単語自体が「もつれている」意味もありそう。
blackguardiseは「黒く守る」と読めるが、よく言う「ディスる」があるから宮田の「悪態をつく」になっているか。hurtleは「突進する」で、turn turtleとかいうと「裏返す」。

stay us wherefore in our search for tighteousness ,
O Sustainer, what time we rise and when we take up to toothmick and before we lump down upown our leatherbed and in the night and at the fading of the stars!
→宮田「それ故に、おお、守護神よ、何時にわれらが起きようとも、いつ妻楊枝を手にしようとも、革床に寝る前であろうと夜であろうと星々の消える時であろうと、義を求めるわれらを守り給え。」
柳瀬「それゆえに堅きを求めるわれらを支えたまえ、おおいなる支護神よ、われらがいつ起き立つとも、いつ妻楊枝を使うとも、革床に組んずれからむ前も、夜も、星の掻き消えゆくときも!」
tighteousnessというのはタイトスカートのタイト、「きつい、厳しい」といった意味があるので、宮田では「義を求める」になり、柳瀬では「堅きを求める」。ふつうならつまようじはtoothpickなんだが、mickというのはアイルランド人の俗称であり、あまり良い呼び方ではないらしい。「妻楊枝」と両者とも書いてるが、これはもともと日本語にある書き方で、ワイフの意味が何らかの掛けことばとしてジョイスが書いたこの単語の中にある、というわけではないようだ。また、ムハンマドはつまようじで歯を綺麗にすべし、と信者に語っているらしい。
lump downっていうのは、lumpだと塊という意味だからよくわからんけど、lampランプかもしれないしrump尻かもしれない。それなら「寝る」という意味が分かる。upownはupとownとuponの合成で、leatherはすぐに「革」だとわかる。そのあとの辺りはもう辞書もあまりいらないレベルだ。